18世紀の終わりから19世紀のはじめにかけてハーモニックの隙間を埋めるために 異なる調性のトランペットやホルンが複数本用いられました。 しかしこれでは音色にむらが生じることには変わりなく、 もっと根本的な解決、つまり一つの楽器で半音階を出すことが求められました。

1788年にイギリス人のCharles Claggetは「音楽上の要求に従って、瞬間的にマウスピースを付け替えるという方法で 2本のフレンチホルンを結合する。2本のトランペットのうち一つをD管、もう一つをEs管にすると、適当なホルンまたはトランペット にマウスピースを移すことによってどんな作品でも演奏することができる。こうすると完全な半音階が得られるからである」という イギリスのパテントを取得しています。

しかしこれを実現するには管を継ぎ足すだけでよいので、以前にはcrooksとして本来の管とマウスピースとの間に差し込んで使用された。 これが18世紀の後半になって上端ではなく中間部に差し込まれるようになって、より簡単に管の長さが変えられるようになっても、 瞬間的に変えることはできませんでした。

そこで19世紀に考え出されたのがomnitonic hornsでいくつかのクルックを回転機構によって切り替えて使用するようにしたものですが、 クルックをたくさんつけすぎたために重くなってしまい、また素早い操作もできませんでした。

そしてついに1815年頃にシレジアのブリューメル(Blühmel)とベルリンのハインリッヒ・シュトルツェル(Heinrich Stölzel)という二人の音楽家が、 より洗練されたヴァルヴシステムを開発しました。これは、クルックをより近い点に集め、 バネを組み込んだピストンを用いることによって、より敏捷性を高めたものでした。

1815年の「一般音楽新聞」にブレスラウの劇場支配人の署名入りの通信が掲載されました。それは以下のようなものでした。
新発明
シレジア上部にあるプレスの休廷楽師ハインリヒ・シュトルツェルはヴァルトホルンを完全なものとするために、ほぼ3オクターブにわたって半音階が演奏できる簡単な装置を発明した。右手で操作する2つのレヴァーによって得られるすべての非自然音は、自然音と同様に響き、力強くて透明感がある。彼はその発明をプロシア王の前で披露したが、現在好ましい成果が期待される。

実際にはこのシステムは若い協力者フリードリヒ・ブリューメルによるところも大きく。ブリューメルはベルリンに駆けつけ、その新発明は自分のものであると主張した。そして10年の期限付きのプロシアでの特許が両者に発行された。これが1818年のことです。

シュトルツェルの開発したヴァルヴに「プッシュ・ボックス・ヴァルヴ」という箱型のヴァルヴ(Kasten Ventil)がある。

a.上はヴァルヴを上げたとき、下はヴァルヴを下げたとき。b.ヴァルヴの表面。c.”環状通路をとおる”空気の流れ。

上の図はシュスターという人の作ったFホルン用の2つのヴァルヴである。基本的にはこれと同様の形をしていたと考えられています。

しかし、このヴァルヴを考案して後にシュトルツェルはこれが実用的でないとして「管状プッシュ・ヴァルヴ」またはヴィープレヒトの言う 「プッシュ・チューブ・ヴァルヴ」に戻ります。この発明はベルリンの奏者には受け入れられませんでしたが、外国、特にロシア,フランス、オーストリアの一部では受け入れられました。これは下の図のような末端開放型のピストンでした。

もう一つの末端開放型ピストンを持った初期のヴァルヴにダブル・ピストン・ヴァルヴがあります。 これは「ヴィエンナ・ヴァルヴ」ともよばれ、ウィーンフィルで用いられているウィンナ・ホルンに使用されています。
下のような形状をしており、それぞれのヴァルヴに外部の棒で連結された2組の短いピストンがあります。

他の楽器のように押し下げられるのではなく引き上げられるタイプのものである。

ピストンがねじ式キャップの下に封入され、ぜんまい式のレヴァーを持つヴィーン式のものは、1830年にウールマンが特許を取り,現在でもウィンナ・ホルンに使われています。

ブリューメルは1828年にシレジアからベルリンに戻り最初の『円錐形回転キャニスター・ヴァルヴ』を作り出しました。 これは内部形のヴァルヴと同一の構造をしていたため特許を取得することができませんでしたが、ロータリー・ヴァルヴであると考えられています。

また、1832年にはウィーンにおいてヨセフ・リードル(Josef Riedl)が箱形ヴァルヴを改良して、ロータリー・ヴァルヴを発明しています。

また1833年に「ピン・カプセル・ヴァルヴ」とヴィープレヒトが呼ぶ、ベルリン・ピストンというシンプルで頑丈なヴァルヴが開発されました。これは1835年に特許が取得されましたが基本的にはすくエアー・ヴァルヴと変わりがありません。 そして、トランペット、ホルン、テナー・ホルン、テューバなどの楽器に適しているとの評価を得ることができました。 下のような外形をしています。

また、このヴァルヴはアドルフ・サックスが自身のサクソルンに盗用したこともあります。 サックスはロータリー・ヴァルヴもサクソルンに試しましたが最終的にペリネのタイプに落ち着きました。

ペリネのピストンはパリのメーカーでホルンやコルネットのメーカーとして有名だったペリネが1839年にとった「大型ピストン」の特許に基づいています。これは実質的に現代のピストン・ヴァルヴと同等のもので、ベルリンピストンのようにそれぞれのピストンに3つの通路がありました。

他にもさまざまなヴァルヴ・システムが考案されましたが現在残っているのは以上に上げたような経路をたどって発展してきたものであります。

そして、これらを統合して3本ピストンのシステムを作り上げたのはブージー商会のブレイクレー(音程補正システムの考案者)でブージー・オートマティックと呼ばれています。これは下のようにまとめることができます。

3本のヴァルヴは、それぞれ半音に換算して1,2,3個分下げる役割を持っています。 またこれらを組み合わせることによって、最大1+2+3=6個分音を下げることができます。 また、チューバユーフォニアムなどでは4つ目のヴァルヴとして半音にして4個分下げる働きを持つヴァルヴをつけているものもあります。 いたずらにヴァルヴの数を増やすことは余りよいことではありません。 2つ以上のヴァルヴを組み合わせて下げた音というのは、本来の音よりも少し高くなってしまうからです。 3番ヴァルヴが短3度、音を下げる働きを持っているとすると、これは元の管の長さの1/5の管を持っていなければなりません。 しかし、1番と2番がすでに使われている状態では、そこから短3度音を下げるためには1+1/8+1/15=143/120の1/5の長さが必要です、 しかし、3番ヴァルヴはこの長さには足りないので、1/4音高い音程になってしまいます。これを解消するために 音程補正システムが考案されました。 また、テューバでは低音部の音程を改善するために音程補正システムを導入するのではなく、 ヴァルヴの個数を増やして(5〜6程度)対応しているものもあります。

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