ブライアン・ボーマンの「You play a What?」を訳してみました.
まあ,だいたいこんな感じだと思うんですが,間違いなどがありましたらここにメールを下さい.
原文はここにあります.

You Play a What?

By Brian Bowman

(Editor's note: I am electronically republishing this article, which I received a few years ago from a workshop presented by Dr. Bowman at the 1991 Western International Band Clinic. Dr. Bowman is currently teaching at Duqesne University, and can be reached via e-mail at bowman@duq2.cc.duq.edu. Thanks to Dr. Bowman for graciously allowing his article to be reprinted here.

(This article was scanned in with optical character recognition software, and then edited by a human (me). Please forgive any typos, or other errors in the text. Computers can sure come up with some funny words sometimes . . .(James "Eric" Tilton, tilt+@cs.cmu.edu, 3/27/94)



演奏家がもっともよく受ける質問は「何の楽器を演奏されるのですか?」という質問である. 私がユーフォニアムを演奏することを説明すると,いつも,疑わしそうに「何を演奏されるんですって?(You play a What?)」 と聞き返される. それは,軍楽隊やコンサートバンドにおいてテナー音域のソロを担当する 美しく豊かな音色を持つ楽器の,「ユーフォニアム」という名称が親しみ深いものではないからである.

ユーフォニアムの歴史は多くの弦楽器が完成の域に達しつつあり, しかしほとんどの管楽器が未完成であった18世紀初頭に始まる. ユーフォニアムの祖先に当たるセルパン(serpent)(訳注:サーペントと読むと形状が思い浮かべやすいでしょう) は,この頃,軍楽隊で行進用として用いられていた. セルパンという名称は蛇のような外見に由来し, もともと教会聖歌隊の低音の補強用に用いられていた. この不格好な楽器は木,真鍮,または銀で作られていた. そして,骨か象牙で作られた深いマウスピースと6個の指穴を持っていた. その後,改良されいくつかのキーを持つようになった. 音程に問題があったので,セルパンを演奏するには音楽的な才能と音感を要した. おそらく廃れる原因となったのは,19世紀になって追加された余分なキーのためであろう. 演奏者がこれらのキーがピッチの改善をしてくれると誤解したため, セルパンは演奏家と作曲家から多くの批判を受けることになってしまった. その批判には,音楽学者のバーニーが言った次のようなものがある. 彼は,無能なものによるセルパンの音色を 評して「大いに腹を空かせたか,怒ったエセックスの子牛」と言った.

1821年フランスの楽器制作者Halaryがオフィクレイドと呼ばれる楽器を含む,キービューグル群の特許を取得した. それは,現代のバスーンとバリトン・サキソフォーンの融合したような姿をしており, 深いマウスピースを使用して演奏した. 穴をふさぐキーを使用することにより楽器制作者は,セルパンよりピッチを正確にし, より大きな音量を出すことを可能にした. セルパンと同様に,演奏に際して演奏者は,すばらしくよい耳と柔軟な唇を要求された. オフィクレイドには,いくつかのキーの並び方の組み合わせと,いくつかの大きさの異なる型があり, 19世紀のオーケストラにおいて,その時代の軍楽隊と同様に用いられた. 19世紀から20世紀にかけて,この楽器は軍楽隊から姿を消したにもかかわらず, フランスでは1922年になっても,まだ販売されていた.

19世紀の最初の2,30年の間,ヴァルヴの構造が発達し革命的な楽器のデザインと手工業化をもたらした. 1842年,アドルフ・サックスはパリに楽器工房を設立し,そこで彼は管楽器の開発者,デザイナーとして認められた. 彼はヴァルヴ・システムを持つ完全な金管楽器群を開発した. それはソプラノからバスまでの音域をカバーし 現在の金管楽器の直系の親となった(訳注:厳密にはこれと同時代にヨーロッパのさまざまな地域で同様の試みが行われています). サックスの開発したこれらの楽器は主として軍楽隊で使用されることを 主目的として開発され, 現在の英国における金管バンドの形成を促した.

これらの新たな楽器が有用であると分かると, 作曲家達はこれらの楽器のために曲を書き始めた. ドイツにおいてヴァーグナー(ワーグナー)は 「指輪(Ring)」のなかにテューバ群を作り上げた, 2本のテナー・テューバ,2本のバス・テューバ,そして1本のコントラバス・テューバである. テナー・テューバは他の作曲家等(シュトラウス,ホルスト,ラベル)も用いて, 有名になった. (訳注:実際にはヴァーグナーが使用したのはヴァーグナー・テューバであると考えられる.イギリスでは代用品としてサクソルンが用いられることもあった.) このテナー・テューバは,実質,同じテナー音域で軍楽隊において発達したテナー・サクソルンと呼ばれる楽器のことである. テナー音域の様々な楽器の命名法による問題が生じた. 英国においてテナー・ホルンと呼ばれた楽器は,ドイツでアルト・ホルンと呼ばれた,又,それがフランスでは アルト(Mi flat)と呼ばれた. ドイツのテナー・ホルンは後に英国のバリトン(baritone)になり,そしてフランスのバリトン(baryton)になった(訳注:現在のドイツのテナーホルン,バリトンについてはここを参照してください). ドイツのバリトン(Baryton)は英国のユーフォニアム(euphonium)になり,フランスではバス(basse Si flat)と呼ばれた. わずかな構造上の違いであったが,現在,これら全ての楽器はほぼ同じ音域と音質をもっている. 今日でも英国の軍隊では伝統的にバリトンとユーフォニアムを区別する(訳注:当然金管バンドでは別個のパートの楽器です).

Meredith Wilsonはユーフォニアムの間接的名声を彼の「Music Man」の中の曲のタイトルによって引き上げた. ダブルベルの楽器が存在することに言及しているのだ. 20世紀初頭,この珍しい楽器はユーフォニアムの本体に小さなベルを加えることにより作られた. この小さなベルの部分はトロンボーンに似た音色を出すことができ,特別なバルブによってそれを切り替えて使用した.

学生やバンドの指導者の間でよくある質問に「バリトンとユーフォニアムの違いは何ですか?」というものがある. 英国においては,金管バンドと軍楽隊では2種類の楽器を別物として取り扱う. バリトンは2種のうちの小さい方でBb管である. ユーフォニアムと同じような形をしているが,バリトンは 細いボアを持ち,明るく軽い音色のする楽器である. ユーフォニアムは太いボアの楽器で, より力強く豊かな響きを持つ楽器である. アメリカの楽器制作者はこれらのよいところを集めた楽器を作ろうと努力した, 結果として今日,(アメリカで制作された)バリトンは主として学校のバンドで使用されるようになった. こうして製造された楽器は様々な状況に対応できるが,もっと太いボアを持つ ユーフォニアムが持っている完全で豊かな響きは欠いていた.

多くの場合,聴衆はプログラムに「バリトン ソロイスト」と書かれたものを見ることによって 楽器とバリトン歌手との間で誤解と混乱を生じる. これをさけるためにも,ソロイストは「ユーフォニアム ソロイスト」とかかれるべきである. 今日,アメリカにおいては,バリトンとユーフォニアムは同じものとして扱われている.

4番管の追加によってユーフォニアムは音域を広げただけではなく, 音程が改善され,テクニカルなパッセージを用意に吹けるようになった. この4番ピストンを押さえることによって基音をBbからFに変えることができる. 4番ピストンを他の3つのピストンと同時に押すことによって,低音域の演奏を容易にし 音程を正確にする(訳注:音程補正機構のついている楽器にのみいえる).

ユーフォニアムという単語はギリシア語の「euphoria」=「よく響く」からきている, そして名のとおり,ユーフォニアムは深く,豊かな音質を持っている. 若い演奏者にはよくありがちだが,演奏の中で音質を見落として技術に走ることが 往々にしてある. 正しいアンブシュアを作り,深く,豊かで,華麗で,なめらかな音を支えるブレスの基礎を築くことに 注意しなさい. 着実に美しい音色を作ることは,自然な抑揚の不足を補うために耳と唇を訓練することにより生まれる. 演奏の技術面では勤勉に音色の訓練を積まなくてはならない, それは音楽的な部分で豊かな音質を維持することで, ソロイストは要求されるテクニカルなソロやパッセージを, 容易に演奏できるようになるはずだからである. ほとんど全ての演奏者が常に追求しているのは, あらゆる類の音楽を演奏することのできる経験豊かな音楽家には,本当に何が必要とされているのか ということである.

音質を向上するために,ほとんどのユーフォニアムの演奏ではビブラートが用いられる. いくつかのビブラートをかける方法がある,横隔膜を用いる方法,のどと顎を用いる方法,どの 身体の部分を用いてもそれを生み出すことはできる. 私は顎でかけるビブラートを好む,それは普段スムーズに,コントールされたビブラートができるからである. そして,若い演奏者のアンブシュアが堅くなりすぎることを抑制するからである. ある一般的な指針ではあるが,ビブラートの速度と幅はしっかり観察しなくてはならない. よい録音はユーフォニアムのソリストのものばかりではなく弦楽器や歌手によるものまで有効である. これらの録音は学生が様々な速度やスタイルによるビブラートを聞くのに役立つであろう. 異なる時代や様式の音楽は異なるタイプや速度,幅のビブラートを使わなければならない. 劇的な燃え立つようなフレーズには,より速い,幅の狭いビブラートの方が, 叙情的なパッセージやブルースに用いるような遅いビブラートが,よりふさわしい. いくつかの音楽形式には,ビブラートを全く用いない方が望ましい. 普通のビブラートの平均的な速さは一秒間に5から7回であろう. やりすぎた,幅の広すぎる,音のゆがんだビブラートにならないように注意しなさい. ビブラートは常に音楽的な効果と音の美しさを増すように用いるべきである.

ユーフォニアムは音楽記述上,長い間オーケストラにおけるチェロに対応して書かれてきた. オーケストラの編成を考慮して書かれた,もっとも初期の記述には,そのような比較は適当である. コンサートバンドが市民権を得ると,ユーフォニアムはすぐに, すばらしい表現力と豊かな響きの音色を持つソロ楽器として認識された. スーザバンドのユーフォニアム・ソロイストシモーネ・マンティアは, 他の(スーザ・バンドの)ソロイストと同様によく知られていた. トロンボーンのアーサー・プライアーコルネットハーバート・クラークらである. これらの人物は自分の楽器を演奏し全世界の聴衆をわくわくさせるだけでなく, 自分が演奏するための作曲や編曲すらこなした. これらのソロは通常当時の流行りの曲やテーマを含んだテクニカルで旋律の美しい変奏であった. 今世紀の初頭,これらの聴衆を楽しませるソロはユーフォニアムでは唯一のオリジナルの曲であった. 真剣なユーフォニアム吹きの学生は他の管楽器や弦楽器,あるいは歌を強引に拝借し,吹いていた. これらの幅の広い,バラエティーに富んだ音楽様式の曲の編曲が ユーフォニアム奏者が様々な様式や時代の音楽を演奏する際の助けとなった.

後の数十年間は何人かの作曲家がユーフォニアムのオリジナルの曲を書いている. 輸入されているフランスの出版物はサクソルンという名称でユーフォニアムを用いている. 大学の作曲家達は今世紀の中頃,新しい音楽の作曲に興味を示した. 私はこの興味が続き,育つことを願っている. この新たな興味によって,新たな演奏の分野が,教養のある教育されたユーフォニアム奏者の前にコンサートを開く演奏家の前途としてひらけるだろう.

だから,私は「何を演奏されるのですか?」と尋ねられたら, 「私は金管楽器の一種を演奏しています.それは豊かで深い音色を持ち楽団において 重要な役目を担う楽器です.そして,リサイタルやコンサートを行う楽器の中で, 計り知れない能力を秘めている楽器.私は,そんなユーフォニアムという楽器 を演奏しています.」 こう答えるのが,たぶん一番よいと思うのだ.

Last modified: 3/27/94

James "Eric" Tilton, Dilletante Euphonist, tilt+@cs.cmu.edu

訳:加藤健太郎 (間違い等あればなんでも指摘して下さい)

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