ブラックトーン,日本語で強制倍音などと呼ばれる音を使うことにより金管楽器は新たな一面を開くことができます.
まあ,主に3本ピストンの楽器において音域が広がるといったところですが・・・.

これは本来の倍音とは違う音程で楽器をならしてしまおうという,一見すると邪道のようですがよく知られているテクニックです. 一番よく知られているものとしてはトランペットのlow Bbの下のFの音程があります.よく,ペダルトーンの練習をするときに,3本しかピストンのない楽器では,一つずつ指を下にずらして音をならすという手法がとられます. これに関しては詳しい説明を行っている教則本は見たことがないのですが,これは明らかにブラックトーン(強制倍音)であるといえます. (この音域を使用する教則本にスタンプの教則本があります. ペダルBbからHigh Fまでという恐ろしい教則本です.) つまりは,なるはずのないFの音が解放で鳴っているのがこの状態なのです.指を一つずつずらさないとだめなのは管の長さの関係で音が高めに出てしまうからです(詳しくはここを読んでみてください).

金管楽器奏者の多くは口によって結構自由に音程を変えることができるのを経験上よく知っています.また,金管楽器初心者の多くが初めて楽器を吹いたときにえもいわれぬ音程で楽器をならすのを経験していると思います.これらはすべてブラックトーンであるといえるでしょう.初心者についていうならば,楽器の振動を自由に唇でコントロールすることができないため,また,楽器がもっともよく振動する固有振動数に対応する唇・息の状態を脳が記憶していないために,不可思議な音程になってしまうと考えられます.これが練習によって楽器のよく振動する音程をが記憶しさらにはそれ以外の音程を拒絶してしまうような回路が脳の中に組み込まれるようです.理論上は,管の振動においてはその間の持つ倍音の整数分の1の周波数ならば管が安定して振動します.つまり,高次倍音および,唇の柔軟性を考慮に入れるならばおよそ出せない音程はないのではないかと考えることができます.実際に,楽器がある程度上達した人(まあ,これは関係ないかもしれません,初心者の方が先入観(ようは脳の記憶の問題)がなくならしやすいかもしれません)で脳の回路をごまかしてその音程を体験すると新たに脳の回路が組み直されて次からは割と簡単にブラックトーンをならすことができます.

よく行われるブラックトーンをならすための練習法としては,まずはBbなどの音から半音下がる音形をピストン,スライドを用いてその音程,唇の状態を記憶し,同じようにして今度はピストン,スライドを用いずにやる.というような練習があります.プロ・トロンボーン奏者の田中さんのオンライン・レッスンではこれをクール・ダウンに勧めています. 注意する点としては,なんせ強制的にならしていることには代わりがないのではじめは強めに息を入れる必要があるということです.なれてくると楽器の鳴り自体も変わってくるようなので弱く吹いてもできるようです,ようは慣れでしょう. とかいっといて,自分でやろうとするとなかなかできませんが・・・(いや,トランペットなら簡単にできるんですけど・・・).

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