ユーフォニアム(Euphonium,アクセントはoにつき,文部省制定の教育用語ではユーフォニウムとされる)とは金管楽器 の一種でだいたい男性の声と同じくらいの音域,中音域を担当する楽器です. だいたい同じ音程の楽器に,弦楽器ではチェロ,金管楽器ではトロンボーン,木管楽器ではテナーサックスがあります. まだできてから150年ほどしかたっていない楽器で,この点でもサキソフォン(サックス)と同じです.この辺の歴史も交えながらユーフォニアムという楽器の紹介をしてみましょう.
ユーフォニアム(Euphonium)という名前はギリシア語の「ユーフォニア(euphonia=心地よい音,よく響きわたる音)」という単語に由来しています. また,昔はこの「ユーフォニア」からしばしば楽器の名前がつけられたため(意味から考えると当然ですが), 全く異なる形状の楽器どうしが似たような名前で呼ばれることもしばしばありました.
ユーフォニアムは,はじめに書いたように金管楽器の1種です. その金管楽器の,もっとも古い形態は,アルプホルン(アルプスホルン),ナチュラルトランペットなどのような, 単なる金属または木の管によって作られました.
そのころは今のようなヴァルヴなどというものは存在しなかったので, それらの楽器は,その管の長さによって出る音が決定され, その基準の音の倍音しか出すことができませんでした.
これを克服するためにいろいろな手法が考え出されましたが,その一つがストップ奏法です. 他にも,たくさんのクルークと呼ばれる替え管を用意することで,複数の倍音列を作る試みなどがありましたが,音質や演奏上の難点が多くありました. それを,一気に解決したのがヴァルヴ(バルブ)システムです. これは長さの違う管をピストンヴァルヴ(ロータリーヴァルヴ)によって瞬時に切り替えるというもので, これによって倍音列の隙間を埋めることができるようになりました. 様々なヴァルヴが考案され,現在ではピストン式とロータリー式の2種類が主に使われています. 現在,金管楽器に用いられるヴァルヴは通常3または4で, 簡単のために半音に換算するとそれぞれ1,2,3,4個分音程が下がり, それを組み合わせることによって最大半音1+2+3=6個分(3番までを用いた場合,4番を併用すると音程が悪くなる,詳しくはここ)音程を下げることができます. これによって金管楽器は新たな時代の幕開けを迎えることになりました.
それまで主として用いられていたナチュラル・トランペットは 半分の長さを持つ1オクターブ上のピストン式のトランペットに変わりました.これによって演奏上の困難がかなり解消されました.
また,ヴァルヴを用いることによって管の長さを単純にいえば半分近くにすることができるようになり, 演奏も簡単になったので,これまで,木管楽器の構造を踏襲していた金管中低音楽器に代わる, 中低音域の金管楽器がヨーロッパ各地で競って開発されました.
そして19世紀半ばにアドルフ・サックスサキソフォンの発明者として有名)が サクソルン類を発表しました. このうちの1つがほぼ現在のユーフォニアムに相当し,それが改良(ボアの拡張,ベルの拡大)され今の形になりました.
西ヨーロッパでは,昔のサクソルン時代における管の太さの違いによって, 別の楽器,バリトン(細管)とユーフォニアム(通常は太管)に発展しましたが. アメリカでは,これらの中間の太さの管も持つバリトン(ベルが前向きで,フロントアクションのピストン)が主流となりました. アメリカで,バリトン(バリトーン)というと,まず間違いなくベルフロントの楽器をさします.また,後に音程補正システムが考案され, それを導入したユーフォニアム,バリトン(テューバなども)はさらに低音域で音程が改善され, 使用可能な音域を広げることになりました.これができたのは基音(ペダル音)も比較的容易に吹奏可能なユーフォニアム,バリトンという楽器の特長のおかげといえるでしょう.
初期のユーフォニアムの名手であったマンティアは独奏曲の中でHigh CからPedal Gまでの音域を使うカデンツァを演奏していますが,現在ではその音域が6オクターブにわたるプロの奏者もいます.
コンペンセイティング・システムを導入したユーフォニアムは他の金管楽器より低い音程の音を正しい音程で出すことができます,といっても通常の楽譜ではE以下の音が出てくることはまれで,たまにペダルBbなどを使う楽譜を見るくらいです. かなりの技量を必要とされるソロの曲では基音を使う曲もあります.