これらの新たな楽器が有用であると分かると, 作曲家達はこれらの楽器のために曲を書き始めた. ドイツにおいてヴァーグナー(ワーグナー)は 「指輪(Ring)」のなかにテューバ群を作り上げた, 2本のテナー・テューバ,2本のバス・テューバ,そして1本のコントラバス・テューバである. テナー・テューバは他の作曲家等(シュトラウス,ホルスト,ラベル)も用いて, 有名になった. (訳注:実際にはヴァーグナーが使用したのはヴァーグナー・テューバであると考えられる.イギリスでは代用品としてサクソルンが用いられることもあった.) このテナー・テューバは,実質,同じテナー音域で軍楽隊において発達したテナー・サクソルンと呼ばれる楽器のことである. テナー音域の様々な楽器の命名法による問題が生じた. 英国においてテナー・ホルンと呼ばれた楽器は,ドイツでアルト・ホルンと呼ばれた,又,それがフランスでは アルト(Mi flat)と呼ばれた. ドイツのテナー・ホルンは後に英国のバリトン(baritone)になり,そしてフランスのバリトン(baryton)になった. ドイツのバリトン(Baryton)は英国のユーフォニアム(euphonium)になり,フランスではバス(basse Si flat)と呼ばれた. わずかな構造上の違いであったが,現在,これら全ての楽器はほぼ同じ音域と音質をもっている. 今日でも英国の軍隊では伝統的にバリトンとユーフォニアムを区別する(訳注:当然金管バンドでは別個のパートの楽器です).
Meredith Wilsonはユーフォニアムの間接的名声を彼の「Music Man」の中の曲のタイトルによって引き上げた. ダブルベルの楽器が存在することに言及しているのだ. 20世紀初頭,この珍しい楽器はユーフォニアムの本体に小さなベルを加えることにより作られた. この小さなベルの部分はトロンボーンに似た音色を出すことができ,特別なバルブによってそれを切り替えて使用した.
学生やバンドの指導者の間でよくある質問に「バリトンとユーフォニアムの違いは何ですか?」というものがある. 英国においては,金管バンドと軍楽隊では2種類の楽器を別物として取り扱う. バリトンは2種のうちの小さい方でBb管である. ユーフォニアムと同じような形をしているが,バリトンは 細いボアを持ち,明るく軽い音色のする楽器である. ユーフォニアムは太いボアの楽器で, より力強く豊かな響きを持つ楽器である. アメリカの楽器制作者はこれらのよいところを集めた楽器を作ろうと努力した, 結果として今日,(アメリカで制作された)バリトンは主として学校のバンドで使用されるようになった. こうして製造された楽器は様々な状況に対応できるが,もっと太いボアを持つ ユーフォニアムが持っている完全で豊かな響きは欠いていた.
多くの場合,聴衆はプログラムに「バリトン ソロイスト」と書かれたものを見ることによって 楽器とバリトン歌手との間で誤解と混乱を生じる. これをさけるためにも,ソロイストは「ユーフォニアム ソロイスト」とかかれるべきである. 今日,アメリカにおいては,バリトンとユーフォニアムは同じものとして扱われている.
4番管の追加によってユーフォニアムは音域を広げただけではなく, 音程が改善され,テクニカルなパッセージを用意に吹けるようになった. この4番ピストンを押さえることによって基音をBbからFに変えることができる. 4番ピストンを他の3つのピストンと同時に押すことによって,低音域の演奏を容易にし 音程を正確にする(訳注:音程補正機構のついている楽器にのみいえる).
ユーフォニアムという単語はギリシア語の「euphoria」=「よく響く」からきている, そして名のとおり,ユーフォニアムは深く,豊かな音質を持っている. 若い演奏者にはよくありがちだが,演奏の中で音質を見落として技術に走ることが 往々にしてある. 正しいアンブシュアを作り,深く,豊かで,華麗で,なめらかな音を支えるブレスの基礎を築くことに 注意しなさい. 着実に美しい音色を作ることは,自然な抑揚の不足を補うために耳と唇を訓練することにより生まれる. 演奏の技術面では勤勉に音色の訓練を積まなくてはならない, それは音楽的な部分で豊かな音質を維持することで, ソロイストは要求されるテクニカルなソロやパッセージを, 容易に演奏できるようになるはずだからである. ほとんど全ての演奏者が常に追求しているのは, あらゆる類の音楽を演奏することのできる経験豊かな音楽家には,本当に何が必要とされているのか ということである.
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