演奏家がもっともよく受ける質問は「何の楽器を演奏されるのですか?」という質問である. 私がユーフォニアムを演奏することを説明すると,いつも,疑わしそうに「何を演奏されるんですって?(You play a What?)」 と聞き返される. それは,軍楽隊やコンサートバンドにおいてテナー音域のソロを担当する 美しく豊かな音色を持つ楽器の,「ユーフォニアム」という名称が親しみ深いものではないからである.
ユーフォニアムの歴史は多くの弦楽器が完成の域に達しつつあり, しかしほとんどの管楽器が未完成であった18世紀初頭に始まる. ユーフォニアムの祖先に当たるセルパン(serpent)(訳注:サーペントと読むと形状が思い浮かべやすいでしょう) は,この頃,軍楽隊で行進用として用いられていた. セルパンという名称は蛇のような外見に由来し, もともと教会聖歌隊の低音の補強用に用いられていた. この不格好な楽器は木,真鍮,または銀で作られていた. そして,骨か象牙で作られた深いマウスピースと6個の指穴を持っていた. その後,改良されいくつかのキーを持つようになった. 音程に問題があったので,セルパンを演奏するには音楽的な才能と音感を要した. おそらく廃れる原因となったのは,19世紀になって追加された余分なキーのためであろう. 演奏者がこれらのキーがピッチの改善をしてくれると誤解したため, セルパンは演奏家と作曲家から多くの批判を受けることになってしまった. その批判には,音楽学者のバーニーが言った次のようなものがある. 彼は,無能なものによるセルパンの音色を 評して「大いに腹を空かせたか,怒ったエセックスの子牛」と言った.
1821年フランスの楽器制作者Halaryがオフィクレイドと呼ばれる楽器を含む,キービューグル群の特許を取得した. それは,現代のバスーンとバリトン・サキソフォーンの融合したような姿をしており, 深いマウスピースを使用して演奏した. 穴をふさぐキーを使用することにより楽器制作者は,セルパンよりピッチを正確にし, より大きな音量を出すことを可能にした. セルパンと同様に,演奏に際して演奏者は,すばらしくよい耳と柔軟な唇を要求された. オフィクレイドには,いくつかのキーの並び方の組み合わせと,いくつかの大きさの異なる型があり, 19世紀のオーケストラにおいて,その時代の軍楽隊と同様に用いられた. 19世紀から20世紀にかけて,この楽器は軍楽隊から姿を消したにもかかわらず, フランスでは1922年になっても,まだ販売されていた.
19世紀の最初の2,30年の間,ヴァルヴの構造が発達し革命的な楽器のデザインと手工業化をもたらした. 1842年,アドルフ・サックスはパリに楽器工房を設立し,そこで彼は管楽器の開発者,デザイナーとして認められた. 彼はヴァルヴ・システムを持つ完全な金管楽器群を開発した. それはソプラノからバスまでの音域をカバーし 現在の金管楽器の直系の親となった(訳注:厳密にはこれと同時代にヨーロッパのさまざまな地域で同様の試みが行われています). サックスの開発したこれらの楽器は主として軍楽隊で使用されることを 主目的として開発され, 現在の英国における金管バンドの形成を促した.
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